睡眠を難しく言うと、「脳を発達させた動物たちに重要な機能であり、単なる活動停止の時
間ではなく生存のために欠くことのできない行動・生体防御技術である」となります。今回から数回連続で、睡眠に関連した興味深い事項を取り上げます。今回は「寝る子は育つ」についてお話します
睡眠中には、その深さによりさまざまな体の変化がおきています。たとえば、呼吸循環器系 (呼吸・脈・血圧など)、皮膚温と体温、発汗、消化器系、内分泌系、陰茎(陰核)勃起などです。この中で、特に内分泌系の変化は、成長・発達に欠かせません。脳下垂体からはいくつものホルモンが分泌されています。その分泌は24時間周期のリズムと睡眠依存性リズムの2つがあります。
脳下垂体から分泌されるホルモンの代表は成長ホルモンです。背を高くする作用があり、生後1年で25cm、学童期は5cm / 年、思春期は8cm / 年くらい背が伸びます。このホルモンは睡眠依存性リズムが主体で、睡眠が始まると分泌が高まります。生後3~4カ月頃からこの現象は始まり、4~5才以降になると眠りに入るとすぐに分泌が一番多くなります(成人パターンになります)。ですから、小児期の睡眠は、単に体の休息状態ではなく、「成長・発達」にとって重要な役割のある生理現象と考えられます。つまり、良好な睡眠(適切な睡眠リズム・質と量)は小児にとってよい成長と発達をもたらすといえます。
性腺刺激ホルモンも脳下垂体から分泌されるホルモンです。性腺刺激ホルモンのひとつである黄体形成ホルモンは、男女とも第2次性徴期になると、睡眠中に分泌が高まります。このホルモンは女性の場合は、卵巣で排卵をおこさせ黄体を形成させて、黄体ホルモンの分泌を促進します。男性の場合は睾丸に作用して男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進します。テストステロンの血中濃度も睡眠中に増加し、思春期の男子に顕著に認められます。睡眠中に多量に分泌される性腺刺激ホルモンと性ホルモンによって、第2次性徴が促進されます。性成熟が完了した成人では、昼夜の分泌量の差はほとんどなくなり、一定水準の分泌が維持されるようになります。眠ることは「性成熟」にとっても極めて重要なのです。
このようなことから「寝る子は育つ」という言葉は理にかなっています。ところで、日本の子どもの睡眠時間を海外の子どもたちの睡眠時間と比べると日本の子供は、世界一寝不足な子どものようです。イギリス・フランスでは半数以上の子どもが10時間以上寝ていますが、日本では10時間以上寝ているのは4%に過ぎません。「寝る子は育つ」に逆行した世の中になってきているようで、決してよいことではないと思います。いかがですか?
0 件のコメント:
コメントを投稿